ウルトラデンチャー物語 超精密特許義歯、ウルトラデンチャーを 作っているのは、どんな人たちなのでしょうか? 以下の談話を、(長いですが・・)どうぞじっくり お読み下さい。 |
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福長院長、熟練技工士とその愛弟子による三者対談 |
院長: | 大嶌(おおしま)さん著作の「開発特許製法による超精密義歯のすべて」の第1章『ウルトラデンチャー物語』は大変おもしろいのですが、大嶌さんにとっては、お辛いことだったのでしょうね。 そもそも、どうしてこのような特許製法の開発に携わることになったのでしょうか? |
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大嶌: | 当時は、入れ歯の精度というような研究は大学のしかるべき人がやるのだから、技工士は歯医者の言うとおりに入れ歯を作っていたらいい、などと同僚からは言われました。 私は、大学でなくても研究はできると思っていましたが、実は最初はそんな大それたことではなく、興味本位、軽い気持ちで始めたのです。 ただ、性格的に凝り性、というか、とことんやってみなければ気がすまない性格で、やりだしたらほんとうに難しくて、夢中になってしまいました。 それで、家族の生活にも支障をきたすほど、のめり込んでしまったのです。 膨大な時間と経費を浪費してしまい、このままでは生活が立ち行かなくなるという状態にまでなってしまい、どうしても結果を出さないと仕方がなくなってしまいました。 行くところまで行って、どうしようもない状態を自ら作ってしまったのです。 |
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院長: | ご家族の方も大変苦労されたのでしょうね。 | |
大嶌: | 今でこそ笑い話ですみます。 | |
院長: | のめり込む対象が、さいころや花札だったら離縁とかも・・・。 | |
大嶌: | はっはっは。博打やギャンブルでなくて良かったと思っています。 | |
院長: | それでは、具体的に入れ歯作り、特許取得についての苦労話をお聞かせ下さい。 | |
大嶌: | もともと入れ歯というものは製作過程において250〜300ミクロン程度の誤差が必ず生じてしまうものなのです。 普通の技工士は大量の義歯を制限時間内に仕上げていかなければならないので、精度についてはその辺で妥協してしまいます。 趣味、興味本位で始めたこととはいえ、どうしたらその誤差を10ミクロン以下にできるのか、来る日も来る日も何度も何度も、試作品作りに明け暮れました。 無駄にした入れ歯の試作品で車庫がうまってしまいました。 写真1を見てください。左上に自転車のタイヤが薄く写っています。 見えるでしょうか?試作品がどのくらいの量か分かっていただけると思います。 こんなことになるなんて自分でも予想していなかったので、初期の頃の分は捨てています。ですから写真に写っているのもごく一部なんです。 今から思えばあのパワーはどこからわいてきたのか、われながら不思議な感じです。 |
写真1 大量になった入れ歯の試作品 |
院長: | 大量の試作品を作る過程で偶然に5ミクロンの精度に達したのですか? | |
大嶌: | いやいや、30から50ミクロンが、何年経っても乗り越えられない大きな壁でしたね。どうしてもっと適合よくならないのか。 何故? どうして? と考える日々の繰り返しでした。いろいろ実験してみたのですが、何回やってもうまくいかず、以後も大量の試作品を無駄にしたわけです。 しかし、ここまでやってきて、目標に到達できなかったら、今までやってきたこと全てが無駄になってしまう。 それからは意地だけでやっていたように思います。 |
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院長: | 精度の高い入れ歯作りへの飽くなき挑戦ですね。大嶌さんにはいつもながら頭が下がる思いです。 さて、入れ歯の精度を左右する要因として、大きく分けて4つの段階での誤差と言うか変形が考えられます。 まず第一は、型どりなのですが、これは、歯科医の側に責任があるとして・・・ |
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大嶌: | 福長先生には大変良い型をとっていただき仕事がやりやすかったです。 | |
院長: | それこそ歯科医の腕の見せ所ですから。 ただ、入れ歯作りのご苦労を思うと、型をとるだけで、後は技工士さんに、こうしろ、ああしろと要求ばかりしているのは、少しばかり良心の呵責にさいなまれる思いです。 |
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大嶌: | いやいや、患者さんのご希望をかなえるのが歯医者さんの仕事ですから。 私たち技工士は裏方に徹するだけです。 |
写真2 白いものが埋没材 |
院長: | いつも無理ばかり言って申し訳ございません。これも患者さんのためとご理解いただき、何分ご容赦の程を。 話を進めますが、技工士サイドで考えるべきことは、石膏や埋没材(写真2)の膨張率と重合時のレジンの収縮率、それと、残留モノマーをいかになくすか、という3つの大きな問題が存在していますね。 |
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大嶌 | その通りです。石膏ひとつとっても、様々な種類があって、その種類ごとに膨張率が微妙に違うわけです。 通常、石膏は、てっとりばやく水をまぜて攪拌するんですが、そんなもんじゃあ、とても精度のいい入れ歯になりません。そこで、コロイダルシリカの溶き汁を使って石膏を練り上げるわけですが、この溶き汁の微妙な濃度の違いによって石膏の膨張率を自分なりにいい膨張率に合わせる事ができるのではないかと気がついたわけです。石膏の膨張率のプラス分とレジンの収縮率のマイナス分をたしあわせてゼロに究極に近づくようにできたら、10ミクロン以下の精度になるのではないかと。 もちろん、膨張率も収縮率も、極限にまでゼロに近づけて、プラスマイナスゼロにするのですが・・・。 |
写真3 大嶌技工士開発の ウルトラ石膏 写真4 大量に練られた石膏 |
院長: | それで、大嶌さんはウルトラ石膏(写真3)を開発されたのですね。 |
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大嶌: | そうです。そこで今度は、大量の石膏練りが始まりました。 ひたすら石膏を練り続けたのです(写真4)。大嶌さんは石膏をとてもたくさん買ってくれると、材料屋さんからは非常に喜ばれました。 こちらはタンスの陰で涙を流していたのですが。 数年かけてやっとのことでレジンの収縮率を相殺する石膏の膨張率を編み出しました。でもまだまだ山あり谷ありです。 これだけではまだまだ不十分なのです。 最後の難関、いかにして残留モノマーを短時間でなくしてしまうかという問題が残っています。 |
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院長: | 通常なら70℃の温度で48時間管理すればある程度残留モノマーを減らすことはできるのではないですか? | |
大嶌: | そうですね。教科書的にはその通りなのですが、どうやって48時間もの間、それも70℃の一定温度を保つのでしょうか? そんなことは始めから無理ですし、そんなことを実際の技工で実践すれば、時間と費用の浪費で、歯科技工自体がなりたたなくなってしまいます。 |
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院長: | そこから、特許取得に至るわけですね。 |
写真5 フラスコ内で重合 写真6 フラスコ内の温度管理 写真7 マイクロウェーブ照射 |
大嶌: | 通常の入れ歯は、最初はなんとか合っていても、1週間からせいぜい3週間もすればレジンの収縮により全く合わなくなってしまいます。 今まで落ちてこなかった入れ歯が、すぐに落下し始めるわけです。 どうすればこのレジンの収縮をなくすことができるか。 ということで、最終的に考案したのが、特許を取得したマイクロウェーブの照射なのです。 マイクロウェーブといえば、すぐに電子レンジが思い浮かびますが、例えば料理なら30秒も時間が狂えば熱すぎたり冷たかったりで、何秒間温めたらいいのか、難しいでしょう。たった1分かそこらの範囲でも難しいのです。 入れ歯の場合、70℃という一定の温度で長時間温度管理をしなければ、精度の良い入れ歯にならないのですが、電子レンジに温度計などついていません。まず70℃という一定で温度管理できるようにするまでが、至難の業でした。 入れ歯はフラスコ内に埋没して重合(写真5)するのですが、そのフラスコ内の温度を70℃で一定に保つことが難しかったわけです。 というよりもまず、フラスコ内の温度を測定し確認すること自体が難しかったのです(写真6)。 実験を繰り返し、試行錯誤の結果、フラスコ内の温度を管理する手立てはやっと習得できましたが、最後の難関、時間の問題が残っています。 1分でできるのか、10分から15分でできるのか、はたまた1時間かかるのか、途方に暮れた毎日でした。 取り分け難儀したのは患者さん個人個人によって、レジンの厚みが違うと言うことです。たった1ミリの厚みの違いで、時間が大きく変わってしまうのです。 しかし、この問題も数年間の研究により、なんとかクリアすることができました。 こうして、マイクロウェーブを照射して常温重合レジンをポストキュアリングする特許を取得したのです(写真7) |
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院長: | いやはや、ご苦労様でした。 |
写真8 5ミクロンへの挑戦 |
大嶌: | 一度に一つの入れ歯しか温度管理できないので、どうしても大量に入れ歯を作ることができない、と言う問題は、今もなお課題として残っています。 けれど、十数年間、石膏の膨張率とレジンの収縮率、残留モノマーのことが頭から離れなかったかいあって、特許を取得できるまでに至ったわけです。 5ミクロンへの挑戦が、ついにかなえられました(写真8)。家族にも多大なる迷惑をかけてしまいましたが、今となればそれもいい思い出の一つかも知れません。 |
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院長: | 長年の苦労が報われてよかったですね。おめでとうございます。 (完成品:写真9) 大嶌さんが開発された方法は、歯科医から見ても本当にすばらしいのですが、17年間一緒に入れ歯作りに携わってきて、私なりに感じたこと、すごいと思ったことは、特許公報には掲載されていない、目に見えないところでも精度を高めるための工夫を色々とされていること。 石膏は言うに及ばず、例えば咬合紙一つとってもそうですし、レジンの種類ごとの最適な研磨材まで考えておられます。 入れ歯作りには欠かせない、咬合器も改良されていますし、自分の重合方法に最も適したレジンも、数多い中から探し当てておられます。一つ一つの工程全てにおいて工夫が凝らされていることではないでしょうか。 このことは、たとえ特許期間が切れたとしても、結局は誰も真似できないノウハウが、あらゆるところにたくさん詰まっているということですから、そういう意味では永久特許ですね。 マイクロウェーブでポストキュアリングだけをしてみても、その他のあらゆる工程での奥の深いノウハウを知らなければ、どうしようもないのですから。 |
写真9 入れ歯完成! |
大嶌: | それもこれも歯科医の先生に、正確なほんとうに良い型をとっていただいて初めて生かされるものです。 正確な型どりという大前提がなければ、全てが台無しになってしまう。その点、福長先生と仕事ができて、幸運だったと思っています。 |
船曳技工士にアドバイスする 大嶌技工士 |
院長: | 私の方こそ、入れ歯に対する目を開かせていただきました。 さて、本当に良いもの、価値あるものは、世代を超えて引き継がれていくものですが、この点においても大嶌さんは、すばらしい後継者を育てられましたね。 船曳(ふなびき)君という私の目から見ても非常に優秀な、才能あふれる技工士さんを愛弟子として育てられたわけですが、大嶌さんの目から見て船曳技工士はどのように写っていますか? |
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大嶌: | なんといっても真面目ですし、熱心な探究心があって、自分で言うのもなんですが、若い頃の自分を見ているようです。 技工士学校卒業後、通常はすぐに働き始めるものなのですが、片岡トレーニングセンターという技工士にとっては最高の場で、クラウンブリッジ、セラミックなどの専門の研修を受けているほど仕事熱心なのです。 また、私はどちらかというと入れ歯作りをするときに経験に左右されることが多いのですが、若いと言っても、もう20年のベテランですが、船曳君は科学的なデータを元にしながら、私たち先輩技工士の教科書には載っていないノウハウを素直に受け入れてくれる懐の広い技工士ですね。 私が開発した特許製法による義歯製作技術も完璧に習得してくれました。 |
入れ歯作りに専念する 船曳技工士 |
院長: | もうまかせても大丈夫なのですか? | |
大嶌: | 大丈夫どころか、私よりも上手ですよ。今度は、私が教えてもらう番です。 | |
院長: | お互いに、切磋琢磨して、精度のいい入れ歯を作っていってください。 歯科医というのは、出来上がってきた技工物を患者さんの口の中に入れる前に、手に取り眺めて見ただけで、その良し悪しの判断が大概つくものなのですが、船曳君の作る入れ歯は排列(歯を並べること)がとってもうまいですね。 スピーの彎曲の微妙なカーブなんか歯科医がこうして欲しい、こうなったらと思う所を何も言わなくてもかなえてくれる。 肝心なところ、本当に痒いところにすっと手が届くというか、もって生まれた才能と言うか、センスが非常にいいですね。相当、数をこなしているとは思うのですが、センスというのは努力だけではなかなか身につくものではありません。 技工士さんというのは、まさに手に職ですから、申し訳ないですが、不器用ではお話になりません。 |
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船曳: | いやあ、痒いところに手が届くなんて、これほどほめられたら、痒いと言うより何かくすぐったいですね。先生、何も出てきませんよ。 |
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院長: | いやいや、本当です。船曳くんの排列には、いつも感心しているんですよ。 痒いにこだわりますが、他の人が作った入れ歯は、どうも隔靴掻痒なのです。 何か、秘訣かコツみたいなものはあるのですか? |
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船曳: | 大嶌さんも本に書かれていますが、入れ歯の排列こそ、3次元の造形物だと思うのです。無歯顎(歯が一本もなく、上下総入れ歯の方)の場合、口の中の微小への無限空間の中で、どこに歯を並べるかと言うのは、本当に難しいです。私も、早や20年以上入れ歯作りに携わってきてやっと最近会得できるようになったと思うんです。 患者さんの歯ぐきの形は、皆さんそれぞれ違いますからね。 まさに無数ですよ。 |
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院長: | なるほど。それでは、船曳くん、今後の抱負は? | |
船曳: | 排列もそうですが、重合についても大嶌さんの域にまで早く到達して、これからも、患者さんが満足してくれる入れ歯を作れるよう、何かもっと出来ることはないかと考え、がんばりたいです。 |
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院長: | よろしくお願いします。 3人で会って、入れ歯談議をする機会はあまりありませんでしたが、本日は、福長デンタルクリニックのホームページ対談のために、忙しい中、時間をとっていただき、ありがとうございました。 |
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